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接写できないデジカメで手軽に接写する方法【その1:立体的な被写体編】

長年にわたる『充電エラーで故障』との誤解から解かれた、我が家のカシオ製薄型デジカメ・エクシリムシリーズの初代モデル「EX-S1」 。カメラ付きケータイもスマホも持たない我が家には、購入当初にも増して貴重な存在となっています。

 

初心者向けのベーシックなデジカメとして必要な機能も一通りそろっているし、得られる画質も筆者のような普段使いには充分なレベル。何より一時しのぎに使っていたトイカメラに比べればはるかに画質も良く、扱いやすいところ点も気に入っています。

 

愛機、カシオのエクシリム(初代モデルEX-S1)。接写機能や光学ズームが備わっていないのが残念。

 

・・・気に入ってはいますが、シリーズ初代モデルということもあってか、撮影に直接関わるいくつかの機能があまりにベーシックすぎるレベルにとどまっているので、被写体や構図によっては不自由を感じさせられることが多いのが悩みの種でした。たとえば:

 

  • 接写機能(マクロモード)が無い 至近距離で小物などのアップ写真を撮りたい時がありますね。でも、このデジカメではどうやってもピンぼけの画像しか得られません。取扱説明書の仕様を確かめてみたら、なんと撮影可能距離が「レンズ表面から約1メートル以上」との記述。むろん、昨今流行りの「自撮り」など腕を目一杯伸ばしてもムリです。これより低画質のトイカメラでさえ、50センチくらいまで寄っても大丈夫だったのに。

 

従って、お正月のミニ鏡餅に付いてくるような、高さ3センチほどの小さなフィギュアを撮りたいなんて時でも、本機の標準レンズでは最低でもこれくらい離さないとピントが合わないのです:

 

マクロモード皆無のエクシリム初代モデルで、小物をきれいに撮りたいときに必要となる最低限の距離感を示す例。

マクロモード皆無のエクシリム初代モデルで、小物をきれいに撮りたいときに必要となる最低限の距離感を示す例。

 

 接写がだめなら、望遠があるではないかと思えば: 

  •  ズーム機能はある。でも・・・ ズームと言っても遠くの被写体に焦点を合わせるためにレンズが動いてくれる「光学ズーム」ではなく、画像の真ん中あたりを機械的に引き伸ばすだけの擬似的な「デジタルズーム確かに、普通に撮るときと比べて最大で4倍の大きさの写真が得られるとはいうものの、そのぶん画質が粗くなってピンぼけ写真とほとんど同じになってしまうことがほとんど。

 

そのデジタルズーム機能を最大限の4倍率にセットして、先ほどのフィギュア3兄弟を撮るとこうなります:

エクシリム初代モデルのデジタルズーム機能を最大の4倍率に設定して干支フィギュア三兄弟を撮ってみたところ。

エクシリム初代モデルのデジタルズーム機能を最大の4倍率に設定して干支フィギュア三兄弟を撮ってみたところ。

 

要するにこのモデルは、近すぎる被写体と、遠すぎる被写体をキレイに撮ることを許してくれないデジカメなのでありますね。買う前にちゃんと確かめなかったのも悪いんですが、カメラというのはちょっと扱い方に慣れてくると、より本格的な写真を撮りたくなってくるものです。

 

マシンが持つ撮影距離の限界のために、遠くのものや近くのものを撮るのを諦めてばかりいるのは切ないし、悔しい。当ブログ記事の説明を助ける画像の必要性もあって、望遠はともかく接写機能だけでも何とか自前で補えないものか?と考えるようになりました。

 

 

接写にしても望遠にしても、しょせんレンズのつくりに関わる問題のはず。かつてカメラ付きケータイが流行りだした頃、撮影機能を補うために簡単に付け外しできるレンズキットが多く出回るようになったのを思い出し、それに似たデジカメ用のアクセサリーパーツがないものかネットで探してみましたが、昨今はカメラ付きスマートフォンが主流の時代とあって、残念ながら筆者が望むような市販品は見当たりませんでした。

     

大鏡・ルーペを重ねて撮る

やはりデジカメそのものを買い換えない限り、まともな接写は無理かな・・・と諦めかけていた時、ネットショップ用の商品写真をきれいに撮るコツをはじめ独自開発の撮影キットなどを紹介しているサイトで有用なヒントを発見。

 

なんでも、適当な虫眼鏡をデジカメのレンズに当てて撮れば、マクロ撮影対応の高機能カメラや高額なレンズなどを買わなくても小物雑貨などの接写は充分できますよー!というのです。虫眼鏡がなければ、百円ショップなどで小型のルーペを買ってきて、レンズだけ取り外してカメラ側にくっつけて使ってもOKだとか。まさに眼からウロコの貴重なアドバイスに、がぜん元気と勇気が湧いてきました。

 

虫眼鏡やルーペのひとつやふたつなら我が家にもあったはず・・・と、早速押入れの中や道具箱を探索。すると、こんなものが見つかりました。 

 

我が家の道具箱の片隅に眠っていた、直径75ミリのガラスレンズの拡大鏡。

 

ガラスレンズと長めの持ち手から成る、昔ながらのシンプルな虫眼鏡。ずいぶん前に何かの景品としてもらったもののような記憶がありますが、使う機会がなかったためにその存在すらすっかり忘れていました。一応、化粧箱入りですが、説明書などは何も無し。箱の外側にレンズの直径について「75m/m」とある以外は、正確な倍率など詳しい仕様は何も記されていません。

カードサイズの薄型コンパクトなデジカメに、こんなクラシカルで大ぶりな虫眼鏡を重ねて撮影するのはちょっと不格好で滑稽な気もしましたが、これで本当に望むような接写ができるかどうか、試してみる価値はあると思いました。 

 

きれいに接写できる距離を探る

問題は、この拡大鏡を使うことで、どれくらいの距離まで被写体に迫ることができるかです。そこで、大写しでもピントがきりりと締まった小物写真を得るのに最適な距離が見い出せるまで、何度も試し撮りしてはパソコンに取り込んでチェックを繰り返しているうちに、ようやく被写体から12センチ前後手前の位置で撮れば、ピントの合った写真を得やすいことが分かってきました。

 

このにわか接写法を使えば、エクシリム初代モデルの標準レンズでは点景か画質粗めの拡大写真にしかならなかったような、小さめフィギュアもこの通り:

市販のミニ鏡餅のおまけフィギュア3種類を、75mm拡大鏡+エキシリムEX-S1でマクロ撮影した写真その1

 

被写体の並びによっては、手前や奥のピントがほんわか甘くなったこんな写真も撮れるようになりました。

 

75mm拡大鏡+エキシリムEX-S1でマクロ撮影した、全高3センチの干支フィギュア3兄弟の写真その2

 

小さめの卓上ルーペを使った場合は?

実は我が家には、上述の拡大鏡よりもっとモダンでコンパクトな卓上ルーペが2〜3個あったので、そのいずれかからレンズだけ取り外してエクシリム側にくっつけるか、引っ掛けるかして使うことも考えました。

 

しかしどのルーペもレンズが分解できないつくりだったため断念。それなら・・・と、ルーペごとエクシリム側に押し当てて撮影に挑戦してみたら、望むような拡大率が得られないばかりか、ルーペのレンズ径が狭いためにそれを囲む外枠のふちまで写り込んでしまうなど使い勝手も今ひとつという結果に・・・。

 

エクシリムのレンズもかなり小径ですが、だからと言って接写用に重ねて使うレンズの径も小ぶりでいいとは限らないんだなあ、と痛感した次第です。

 

虫眼鏡を使った接写方法の難点

こうして現段階では、75mm径の虫眼鏡を使うのが一番いい方法であるとの結論に至りました。ただ、右手にデジカメ本体、左手にはそれよりずっしりと重いガラスレンズ入りの拡大鏡を構えて、近すぎても離れすぎても困る被写体との距離を探りながら、手ブレしないよう気を配って撮影する作業は、なかなかしんどいです・・・。

 

虫眼鏡スタイルに付き物の長い持ち手は、当初はこういう特殊な撮影作業においても便利かと思われました。でも何度か撮影を繰り返すうちに、左右の手それぞれの構え方のバランスの問題などもあって、安定した姿勢を保つのにかえって邪魔になることも分かってきました。

 

幸い、この拡大鏡の場合は持ち手の根元がネジ式になっておりレンズ側から簡単に分離できるつくりなので、最近では持ち手を取り外してレンズ単体だけを左手の指先でガッチリと掴むように支えながら撮影にのぞむことのほうが多くなっています。落としたりしたら大変ですからね。

 

ぬいぐるみをモデルにした接写例

同じ方法を使ったもうひとつの例として、上述のフィギュアよりもっと大きめの、当ブログのアシスタントである熊のぬいぐるみ「うろこちゃん」をモデルに、顔のアップ写真を撮ってみます。

 

ちなみに、うろこちゃんの大まかなサイズは次の通りとなります。

  • 【全長】約37センチ、【座高】約23センチ。
  • 【顔部分の高さ】頭頂部から下あごまで約11センチ (耳まで含めると約12センチ)

 

まずは、虫眼鏡を使わずエクシリムの標準レンズだけで、少し離れた位置から撮ってみます。

洗いたてのハンディモップと、クマのぬいぐるみのうろこちゃん

洗いたてのハンディモップと、クマのぬいぐるみのうろこちゃん

 

演出のため、ここで少しおめかしを・・・。

モップをかつら代わりに被ってもらい、ストリートファッション系(?)のポップな装いに。

 

続いて、例の75mm虫眼鏡をエクシリムのレンズに重ねて撮ったのがこちら:

 

虫眼鏡とエクシリムの合わせ技で、ぬいぐるみの顔部分を接写してみたところ

 

グリーン×ビビッドピンク系のチェック柄生地の風合いをはじめ、淡いピンク色のモップの毛束の質感など、細かな部分もかなり鮮明に撮れました。

 

・・・モデル本人も、たぶん気に入っていると思います。 

テディベア界の菅田将暉と呼んでほしい・・・(うろこ談)

テディベア界の菅田将暉と呼んでほしい・・・(うろこ談)

まとめ

手持ちの虫眼鏡を使うという、こんな原始的とも言うべきやり方でも、自分にとってほぼ理想通りのマクロ撮影ができると分かったときは本当に嬉しかったです。

 

構え方が不安定になりがちで手ブレしやすいことや、被写体との適切な距離をほとんど自分の勘で判断しなければならないことなど、それ相応の機能を持っているカメラであれば必要のないことまで気にしなければならないのが難点とは言え、低コストで手軽に近接撮影がしたいときにはなかなか便利ではないかと思っています。

 

次回の記事では、同じ虫眼鏡を使った接写スタイルを用いて、小さな印刷物や手描きのイラストといった平面の被写体を撮るために工夫してみたことについてご紹介します。 

 

kuracinnamon.hateblo.jp