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ヒップホップ系アレルギーでも聴けた。米国の50代ラッパーTobyMac(トビーマック)の励ましソング

思えばこの世に生を受けてから童謡、民謡、クラシック、歌謡曲、演歌、フォークソング、ニューミュージック、ロック、ゴスペル等々、実にいろんなスタイルの音楽に触れてきましたが、アラフィフのこの歳に至るまでどうにも馴染めなかったのが、ラップとかヒップホップなどと呼ばれるスタイルの音楽でありました。

 

単調な旋律にのせて早口言葉を延々と唱えるだけの楽曲、

飛ぶ虫を捕まえる仕草を思わせる風変わりな振り付け、

大きく着崩したアクの強いファッション・・・。

 

そうした独特の文化が、巷で言われるほど「カッコいい」とか「洗練されている」などとはどうしても思えず、その世界に触れるのを極力避けてきたところがあります。 

 

そう毛嫌いするにゃよ。ラッパーの動きは猫パンチの構えと通ずるところがあるんだぜ。

そう毛嫌いするにゃよ。ラッパーの動きは猫パンチの構えと通ずるところがあるんだぜ。

 

ラジオやネットでヒップホップ系のアーティストが登場すればすぐさま別のチャンネルに切り替えたくなるし、買い物でよく行くスーパーに入ったときその系統の音楽が流れていたら一刻も早くレジを済ませて外に出たくなるといった、一種のアレルギー反応を示すのが常でした。

 

ヒップホップ系が大好きな人の趣味・趣向が絶対的に悪いとは言いません。でも自分という人間に限っては、この手の音楽に夢中になるようなことは未来永劫ない!と信じきっていた訳ですが・・・世界は広いものです。そんな筆者でも抵抗なく聴けて、しかも繰り返し聴かされても一向に気にならないラップミュージックと出会ってしまったのであります。

 

 

 

気になるアイコンとの出会い 

きっかけはツイッター画面での何気ない寄り道でした。最近の筆者のお気に入りアーテストでもあるオーストラリア出身の兄弟デュオ 「for KING & COUNTRY」の情報をチェックしに行くたびに、ツイッター画面の端にある「こちらもおすすめです」の欄に、なぜかいつもふっと目が行くほど何となく気になるアイコンの存在が。

 

そのアカウント名には「TobyMac」と表示されています・・・。


おすすめというくらいだから似たジャンルのアーティストだろうけど、知らない名前だし、目的のアーティスト以外は興味は無いし、わざわざ確かめるほどのことはあるまいと思ってずっと素通りしていました。

 

しかし今度はYouTubeに行くと、またもやそのサイドに並ぶおすすめの動画一覧の中に、同じ「TobyMac」というアーティスト関連の動画がちらほら混ざっています。

 

twitterでもYouTubeでも、筆者が行く先々で姿を見せるこの細身のメガネのオジサンはいったい何者なのか。ある日、意を決してその楽曲を聴いてみることにしました。

 

まずはこちらYouTube上の一覧のサムネイル画像で気になった、何やらストーリー仕立てらしきモノトーン調のミュージック・ビデオから。静止画となっているワンシーンを見る限りでは、大都会の片隅の路上を舞台に乱闘でも始まりそうな構図で、あまり気持ちの良くない筋書きではなかろうかと一抹の不安を抱きつつ・・・。

 

Everything


TobyMac - Everything

 

冒頭からいきなり筆者の苦手とするラップ調で始まったものの、思ったより控えめで爽やかな旋律。動画のストーリーも至ってシンプルで穏やかな内容でした。ギターやドラムをバリバリに効かせるような激しい楽曲ではなかったこともあって、筆者としてはあまり無理しなくてもすんなり聴き通すことができました。
 
メロディライン自体はそれほど個性的とか新しいという印象はなく、どこかレトロな、懐かしい感じ。確かにラップ風ではあるけど、普通のロックとかポップミュージックからさほど離れてもいないような、言ってみればマイルドで後味の爽やかなラップ音楽のように感じられました。
 
いずれにせよ声は渋いし歌唱力はしっかりしているし、性格的に主張の強い怖い人でもなさそうなので改めてネットで調べてみると、ウィキペディアにこんな記述が。
 
トビーマックとは、アメリカ合衆国のクリスチャンラッパーである。1964年生まれで、本名は「ケビン・マイケル・マッキーハン」。 
引用元:『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』 2017年10月6日 (金) 13:11(https://ja.wikipedia.org/wiki/トビーマック) 
 
・・・あれ。筆者とあまりトシが変わらないじゃん。何でも、1987年の活動開始以来、聖書の教えをテーマにした楽曲で人気を集め、米国では息の長い人気のアーティストのひとりなんだとか。ゴールドディスクはじめ華やかな受賞歴の持ち主でもあるようです。
 

I just need U. 

クールなようでいてじわっと心が温まってくるような上述の「Everything」の楽曲にいくらか安堵したところで、もうひとつYouTube上のおすすめ一覧でたびたび見かけて気になっていたこちらのミュージックビデオも視聴してみました。
 


TobyMac - I just need U.

 

何か辛いことがあったのか失敗したのか、ひとりオープンカーのハンドルを握り荒野の一本道を飛ばす、無表情な中にもどこか寂しさを滲ませる黒いスーツ姿の男性・・・というのがこの動画の中での歌い手の役どころとなっています。

 

この曲の歌詞のベースとなっているのは、旧約聖書詩篇23篇にあるようです。

 

たとい、死の陰の谷を歩くことがあっても、私はわざわいを恐れない。あなた(※筆者注:主なる神)が私とともにおられるから。

 

カトリックでもプロテスタントでもユダヤ教でも、途方に暮れるような困難の中にいる人に励ましと勇気を与えてくれる「心の糧」として古くから親しまれ唱えられてきた祈りの言葉であり、他のクリスチャン・アーティストの楽曲の中にもこの聖句をテーマにするものが多くみられます。

 

この動画の中ほど(1分25秒あたり)で映しだされる、月夜の下に停めた車の周りを狼が取り囲むシーンでは、ボンネットに横たわったTobyMac氏がこの祈りの言葉をほぼそのまま引用したような歌詞をラップ調のリズムにのせて口ずさむように歌っています。(YouTube動画右下にある字幕機能(英語のみですが)をオンにして視聴するとより分かりやすいと思います)

 

なお、途中、荒野の果てから古代中東の隠者か何かを思わせる黒っぽいフード付きのマントに身を包んだ男性3人組が登場しますが、この演出が何を意味しているのかちょっと解釈に苦しむところもあります。・・・が、TobyMac氏ご本人によれば、この3人は彼にとって正しい意思決定へと導いてくれる「守護天使」なのだと、ツイッターで明言しています。

 

 ・・・とは言え、伝統的な守護天使のイメージからするとかなりかけ離れているように見えるこの表現には、米国のファンの間でも賛否が分かれておりいろいろ議論されているようです。

 

もっとも、この動画の中での同氏の服装が、黒の中折れ帽に黒のスーツ上下というクラシカルな装いなのに足元だけ素足に白のスニーカー履きといった、いかにもヒップホップ系の着崩し方を見ると、守護天使に対するそうした大胆な表現も彼ならではの解釈のひとつなのかも知れません。

 

ただ、この楽曲のもともとの歌詞には、守護天使も狼も、さらには車の爆破に関わるような描写も一切見られませんし、動画の中のストーリーは本来の歌の意味するところから微妙にズレている気もしないでもないので、筆者がこの歌を聴く時はたいてい動画は見ないで楽曲だけ流して味わっています。

 

ちなみにこの動画についてはメイキング映像も公開されています。1分程度と短いですがこれはこれでなかなか面白かったです。

TobyMac - I just need U. (Behind The Scenes) - YouTube

  

Funky Jesus Music - ライブ動画

この人の歌も悪くないなと思い始めたところで、ライブ映像も見てみました。こちらは2016年のコンサートツアー中、ルイジアナ州にある会場で披露された曲のひとつ。この動画でも英語字幕機能を表示させながら視聴すると一層楽しめると思います。

 


TobyMac - Funky Jesus Music (Live) ft. Hollyn

 

冒頭のおしゃべりの中で、「Gumbo(ガンボ)」という単語が繰り返し出てきます。何のこっちゃ?と再びウィキペディア先生に尋ねてみました。すると、

 

ガンボは、アメリカ合衆国ルイジアナ州を起源とするシチューあるいはスープ料理である。

引用元:『フリー百科事典 ウィキペディア日本語版』 2018年1月21日 (日) 14:26 (https://ja.wikipedia.org/wiki/ガンボ_(料理))

 

とのこと。調理例の写真を見るとトマトシチューのような感じで、なかなか美味しそうです。TobyMac氏はこの動画の中で、会場がルイジアナ州にあることと、この後歌う曲の歌詞にも「Gumbo(ガンボ)」の文言が用いられていることにちなんで、自分が作る音楽は、いろんな素材が投入されたこの煮込み料理のようだとの持論をユーモアたっぷりに繰り広げます。

 

このトークで会衆が盛り上がったところで(約1分37秒経過後)、バックバンドのベースに始まりドラム、ギター、そしてゲストのシンガーHollynさんを含めた女性コーラス、トランペットが順々に加わって文字通りファンキーなラップ調の楽曲が賑やかに始まります。

 

Move (Keep Walkin') −ライブ動画

この他にも同じ会場で披露された楽曲が多数YouTubeで公開されていて、どれも楽しく励ましと慰めに満ちた歌詞が盛り込まれているものばかりなのですが、個人的にはこちらの応援歌的な楽曲が一番ヒットしました。

 

ラップ音楽的な要素は割と少なめで、筆者のようなヒップホップ系初心者にも聴きやすい旋律だったからかも知れません。バンドメンバーと一緒に行進したり、ソロでしんみり歌ったりとメリハリの効いた一曲でもあります。


TobyMac - Move (Keep Walkin') (Live)

 

Til The Day I Die −ライブ動画

前述の「Move (Keep Walkin')」のラップ的要素が全体の2−3割程度だとしたら、こちらの曲は9割方ラップ調で占められています。しかしこの曲を聴く段階でヒップホップ系アレルギー症状がかなり改善して来た筆者にとっては、あまり気になるレベルではなくなって来ました。

 


TobyMac - Til The Day I Die (Live)

 

舞台演出や演奏はゴスペルとは思えないほどかなりハデですが、歌詞そのものは「自分の生命が終わるその日まで、主の御名を讃え続ける」との歌い手の真摯な決意がひしひしと感じられる内容となっています。

 

The Elements

ルイジアナ公演の楽曲で他にもご紹介したい曲がたくさんあったのですがこれくらいにして、今年2018年10月12日にリリースされたばかりのアルバム"The Elements"から、同じタイトルの付いた一曲について取り上げてみたいと思います。

 

これもひとつの励ましソングながら上述の喜々とした応援歌とは少し趣きが異なっていて、緊張感と気迫に満ちた楽曲に仕上がっています。と言うのも、この世で日々私達が出会う、人生を脅かし本当に大切なことを見失わせようと迫ってくるさまざまな事象との「メンタルな闘い」をテーマにしているからでしょう。

 

曲の背景については、こちらの短い動画(英語の字幕表示機能付き)でTobyMac氏ご本人も語っています。

 


TobyMac - The Elements (Story Behind The Song)

 

以下はこの曲のオフィシャル音源。「ラップ調」と「普通のロック調」を交互に組み合わせたような構成で、聴き手の心を揺さぶるような起伏に富んだ一曲です。

 

動画そのものは、流れる黒雲の映像をバックに小さな線描アニメを添えたような至ってシンプルなつくり。残念ながら英語字幕は付かないので、詳しい歌詞はGoogleで「tobymac - the elements lyrics」などのキーワードで探せばすぐ出てきます。


TobyMac - The Elements

 

エレメンツ、エレメンツと同じ言葉の繰り返しがかなりの部分を占めるこの曲の歌詞の中で、一番グッと来るのはこちらのフレーズかも知れません。世界の悲惨さを嘆きつつも、ただ悲観したり絶望するだけには終わらない凛とした前向きな姿勢が伺えます。:

I got spirit, I got faith
I might bend but I won't break
I'll fight the elements

 

なお、この楽曲は11月下旬に、見るからに厳しい冬景色を舞台にしたミュージックビデオとしても公開されています。


TobyMac - The Elements (Official Music Video)

  

まとめ

ひょんなことから出会ったベテランラッパーのおかげで、ラップ調の音楽も何とか無理しないで聴けるようになった筆者。・・・人間変われば変わるもんです。

 

なお、根っからのヒップホップファンの方で、筆者おすすめの曲ではおとなしすぎて刺激が足りんわーという方は、もう少しお若い頃、たとえば5〜8年くらい前の作品を聴いてみてください。ヘビメタ級の騒々しさとカメラに向かって噛みつかんばかりに叫ぶような歌い方が際立つミュージックビデオ作品も多く見られます。

 

例えばこちらの楽曲「Eye on It」などはいかがでしょうか。同じクリスチャンのシンガーソングライター、Britt Nicole(ブリット・ニコル)さんとコラボしたヒット曲でもあります:

 


TobyMac - Eye on It ft. Britt Nicole

 

今のところ筆者は、これくらい激しいレベルのヒップホップソングにはまだまだついて行けません。あまり無理して聴き続けるとアレルギーが再発しそうなので、もうしばらくの間、安静と治療が必要(?)かなと思っています・・・。

 

 12月8日追記:TobyMac氏のクリスマスソング

TobyMac氏のラップ音楽に出会って1か月。なんだかんだ言いながら相変わらず暇を見つけてはその楽曲の歌詞を味わったり公式ツイッターの投稿をチェックしております。最近は待降節に入ったとあってこんなアニメ仕立てのミュージックビデオも紹介されていました。 

 


TobyMac - Bring On The Holidays

 

オリジナルのロゴ入りキャップを被り、メガネをかけた男性はもちろんTobyMac氏ご本人。クリスマス休暇を前に、遠く離れた空港から家族の待つ自宅に向かう・・・というこの時期よくあるシーンから始まります・・・が、降る雪が激しくなり飛行機は全便欠航というまさかの事態に。奥さんにはメールで必ず間に合うように帰ると約束した手前、さあどうする・・・? アニメだけでもほのぼのとした雰囲気で楽しいですが、英語字幕機能をONにして視聴すれば歌詞の味わいが一層深まると思います。