暮らしなもん

衣・食・住で日々出会う品々とのおつきあい帳

テッポウユリとイースターリリーとマドンナリリー

近所の庭先に、すっくと立っていたのを見かけて以来、いつか描いてみようと思っていた、白いユリ・・・テッポウユリ(鉄砲百合)のひと株。

 

切り花やアレンジメントとしてではありません。 一本の太い茎に幾つもの大輪の花とつぼみと葉っぱを伸ばした、優美ながらもどこか強靭さを思わせる立ち姿として。

 

ところで、ユリと言えば、聖母マリアの受胎告知をテーマにした古典的な聖画の中にもかなり頻繁にユリの花が登場するのですが、筆者はかねてからその「つぼみの付き方」というか「向き」とか「角度」が気になっておりました。

 

たとえば、フランスの聖地ルルドのロザリオ大聖堂の中に飾られているモザイク画に描かれたユリ。

ロザリオ大聖堂内部、喜びの玄義の第一の場面。

ロザリオ大聖堂内部、喜びの玄義の第一の場面。左は御使ガブリエル、右は聖母マリア

大天使ガブリエルの肩にもたれている白いユリの枝。

大天使ガブリエルの肩にもたれている白いユリの枝。
つぼみがまっすぐ立っています。

 

またこちらドイツの Heinrich Johann Sinkel (1835-1908) という画家による受胎告知(1862)という作品でも・・・

ハインリヒ・ヨハン・シンケルによる1862年の作品「受胎告知」

ハインリヒ・ヨハン・シンケルによる1862年の作品「受胎告知」

ユリのつぼみ二つのうち、立っているものが見られます。

ユリのつぼみ二つのうち、立っているものが見られます。

また聖母マリアの浄配と呼ばれるイエス・キリストの養父、聖ヨセフもまた、ユリの花と併せて描かれる姿が見られますが・・・

こちらもユリのつぼみが鋭角に曲がることなく、茎の延長線上にあるような描き方です。

こちらもユリのつぼみが鋭角に曲がることなく、茎の延長線上に伸びたような描き方です。

 

筆者がふだん目にするユリのつぼみは、このように茎に対してほぼ直角か鋭角に倒れていることが多いような気がするのですが・・・。

筆者の記憶にあるユリのつぼみの付き方のイメージ。

筆者の記憶にあるユリのつぼみの付き方のイメージ。

そんな疑問を抱きつつも、西洋の聖画のようなつぼみの表現もいいなと思いながら構図を整え、描き終えた後でまた気になったのでネットで調べてみました。すると、

  • テッポウユリ(鉄砲百合)は、九州南部から沖縄、台湾あたりにかけての地域が原産。
  • 19世紀に入り、日本産のテッポウユリが欧米に紹介されると、それまで知られていたヨーロッパ南部や地中海沿岸原産の「マドンナ・リリー」の代わりとして盛んに輸出され、復活祭の祭壇を飾る花としても人気を集めた。 
  • 英語では「Easter lily (イースターリリー)」、フランス語では「Lys de Pâques (リス・ドゥ・パーク)」と呼ばれるらしい。

 

確かに、マドンナリリーの写真を画像検索から見てみると、古い聖画に描かれているユリと同じように、つぼみが下を向かずまっすぐに天を向いているものが多いですね。

 

花や葉っぱなど全体の姿も、テッポウユリよりはやや華奢な印象・・・さすが聖母のイメージにふさわしいユリと言えます。

 

さて、筆者のテッポウユリの絵は、マドンナリリーにならって上向きのつぼみを描き添えて以下のような塗り絵に再構成しました。無料素材サイトにてダウンロードできます。よろしかったらご利用ください。

www.ac-illust.com